はじめに

はじめ に

 神話は、どのような国でも祭祀の中に取り入れられて、古代人の信仰の土台とな り、思想的な拠り所となっていた。
 日本の神話は古事記に代表される。古事記は上、中、下の三巻から成り、この前 に古事記成立の動機などを示す序文が付けられている。その序文には、「過去の時代は暗く遥か昔のことであるが、前々からの教えによって国土を生み出したと きのことを知り、先の物知り人によって神を生み人間を成り立たせた世のことが分かる」とあるように、特に神話部分は、古い過去から先賢によって伝えられて きた古代の知識、ないしは事実と考えられていたものであったことが分かる。

 そのような古事記の神話には、本質的に何が書いてあるのか、近年、暗号 化文献とみる立場から、ユニークな説が出されるようになった。筆者の知る限りでは、山田久延彦氏や辻村三氏が活躍されている。
 山田氏は宇宙考古学(古代史解明の糸口を宇宙文明へと広げる)という新境を開 かれたが、その発想の卓抜さを可能とするほどに、古事記が驚異的な未来知識をその中に秘めていることは確かなことである。
 だが、筆者も時同じくして研究を始め、独自のやり方で一説を持つに至った一人 であり、むろん諸氏の説とは観点が異なり、結論もまったく異なったものとなっている。

 古事記の神話は、一つ前の時代の相当に程度の高い文明の歴史を語り、そ れが変災で滅び、再生して今の時代に至る過程を大掴みに伝承していると考えられる。それゆえ古代にあってもなお、古事記との命名はすこぶる妥当なわけであ るが、これに加えて、今の時代の終わりに至るまでの預言らしい記事もみうけられるので、特筆しようと思う。

 過去の程度の高い文明とは伝説上のアトランティスを物語るものかも知れ ない。もしそうならば、古代の為政者にとってその名残りを保持することは、家柄の先古に遡る事実を示すに足る有力な証しとなり得たであろうし、自国に知識 資産の存在するを以て、対外的に誇れるものとなったに違いない。かつてのアッシリア、バビロニア、ギリシャなどの優れた文化が、国と民族の優秀性を物語っ た例をみるべきだろう。

 ならば、筆者の見出した解釈は正しいと言えるのか、確たる証拠があるの かという段になると、海外の洪水伝承などに関する著物を参考にしたり、謎めいた遺物へのこじつけ的解釈を施すくらいがやっとのことであった。 ところが今 回、まったく偶然にテキストである古事記の指し示す土地の側から証拠立てる方法が見付かったのである。その方法とは、まったく途方も無いけれども、発想を 少し変えれば実に単純なものであった。

 古事記に語られる地名は、今でも最古の部類の祭祀霊場として西日本を中 心に分布し、禁忌の地を形成している。もしも古事記が予想どおりの文献なら、そうした土地の間に何らかの相関関係が存在しても不思議はないという脱常識的 な発想から、複数の祭祀霊場を点として与え、これらを線で結んでみることにしたのである。すると、それらは相当見込みの有る精度で、シンプルな幾何学図形 上に配置されていることが判明した。

 図形には、数十ないし数百キロにおよぶ巨大な直角二等辺三角形や辺比 5、4、3の直角三角形、黄金比率の採用らしき大小の構図、半径2緯度長の円の構図などがあり、長さには規格が認められ、当時識られていないはずの地球の サイズさえ考慮されているようであった。それは従来の歴史観では、およそ解釈のしようのないものである。

 だが、それらの地点群はさらに重畳的に、特別な祭祀シンボルを描き出し たことから、何者が、また何を目論んでいたのかについても推論の展開が可能となった。それは、ユダヤの神秘思想、カバラの祭祀に使われるシンボルであった のである。

 このことから、本論では、謎の超古代を窺い、古代中東に始まる民族の変 遷を考え、中心となる古代日本史を推理し、カバラの真骨頂である現代にまで及ぶ預言に言及するという広範囲を扱うこととなってしまった。
 糸口になった古事記は、摩訶不思議な古文献であった。その中には古代人では想 像もつかないはずの未来知識が語られている。

 顕著な例を一つ挙げてみよう。さし絵は古事記上巻、国譲りの段の一節 「建御雷男神、十掬の剣を浪の穂に逆に刺し立てその先に趺み坐て」をイメージしたものである。この時、天鳥船が伴われたが、これはまさに戦闘機から投下さ れた核爆弾の炸裂の光景なのである。その意味については本論で考察することにしたい。

タケミカヅチノヲノカミ